はじめに
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、相続人の中に音信不通で行方不明な方がいる場合は、遺産分割協議を行うことができません。そのため、その相続人に対して不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人との間で遺産分割協議を進めることになります。
1.不在者財産管理人とは
不在者財産管理人とは、その名の通り、不在者の財産を管理する役職です。利害関係者や検察官の請求があると、家庭裁判所が不在者の財産管理人を選任し、その管理人が不在者の財産を管理することになります。不在者財産管理人には、弁護士や司法書士などが選任されます。
2.趣旨
なぜこのような制度があるのでしょうか。ある人が不在になると,以下のような問題が生じます。
(1)本人、利害関係人の保護
たとえば、いなくなった人がアパートのオーナーだった場合には、アパートを管理する人がいなくなってしまいます。そうなると、将来的に帰ってくる可能性がある不在者本人やアパートを借りている入居者、そして将来的にアパートの所有権を継承するであろう子どもなどが困ります。ところが、利害関係者であっても、他人の財産を勝手に管理することはできません。そこで、利害関係者(たとえばアパートを借りている人)などの請求に基づき、アパートなどを管理する者を置く制度が必要なのです。
(2)社会経済上の不利益の回避
民法の規定の趣旨として、「社会経済上の不利益」という考え方が重要です。日本は共産主義の国ではなく、国民には財産権が認められています。つまり、「私の物は私の物」という概念があります。しかし、同時に国民の財産は社会全体の財産であるという側面も存在します。「社会全体の」とは簡単に言えば「みんなの」ということです。特に不動産にはこの考え方が当てはまります。国民個人が所有権を有している土地や建物は、個人の財産ですが、それは社会全体(国家)の財産という側面も持っています。国家の要素の1つである「領土」は、国民が所有している土地を繋ぎ合わせたものです。
したがって、不在者の財産(特に不動産)が荒廃することは、社会経済上の不利益になるため(みんなにとって不利益になるため)、それを防止するために不在者の財産管理の制度が必要とされるのです。
(3)要件
利害関係人または検察官が,家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を請求するには、以下のいずれかの要件を充たす必要があります。
①不在者本人が財産管理人を置かなかったとき
不在者自身が財産管理人を置いた場合は、その管理人が財産を管理しますので、不在者財産管理人の制度は使用されません。具体的には、不在者が相当な資産を持っており、自身の財産の管理を弁護士に任せている場合などがこれに該当します。
②財産管理人の権限が消滅したとき
これは、不在者自身が財産管理人を指定していましたが、その管理人の権限が消滅した場合を指します。たとえば、前述の例のように弁護士に委任した場合に、弁護士との契約期間が終了した場合などが該当します。このような場合、新たな財産管理者を選ぶ必要が生じます。 上記の①と②は、要するに「財産管理者がいない状況」ということを表しています。
(4)請求権者
家庭裁判所に請求できるのは、以下の者です。
①利害関係人
上記(2)①で出てきた,アパートを借りている人やアパートのオーナーの子供(将来の相続人)などが、 これに当たります。
②検察官
(5)効果
家庭裁判所が、不在者の財産管理人の選任など、必要な処分を命じます。
(6)不在者の財産管理人の権限
家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人ができることは,以下の行為に限られます。
①保存行為
財産を維持する行為です。
例:家屋の修繕
②利用行為(物や権利の性質を変えない範囲で許されます。)
財産を基に収益を得る行為です。
例:物の賃貸、現金の預貯金
③改良行為(物や権利の性質を変えない範囲で許されます。)
財産の価値を増加する行為です。
例:家屋に電気・ガスの設備を施す。無利息の貸金を利息付きにする。
つまり,その財産がなくなってしまわないことに限って認められているのです。
それに対して, これらの範囲を超える処分行為をするときは,家庭裁判所の許可が必要となります。その財産がなくなることにつながるからです。
例:売却、抵当権の設定、遺産分割
※参考書籍 司法書士試験 リアリスティック3 民法III 著者 松本 雅典
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