相続

遺言執行者がいる場合の不動産の清算型遺言

※本動画はAIで簡易作成しています。音声の読み間違い等がある場合がありますので、詳しい内容は下記の記事をご覧ください。

1.清算型遺言とは

清算型遺言とは、不動産そのものを相続人に取得させるのではなく、不動産を売却し、その売却代金を相続人に分配することを内容とする遺言です。

例えば、相続人が複数いる場合、不動産を共有で相続すると、その後の管理や売却について相続人全員の協力が必要となり、意見が対立してトラブルになることも少なくありません。

このような場合には、「不動産を売却し、その売却代金を相続人に分配する」という清算型遺言を作成することで、共有状態を避けることができます。

もっとも、不動産の売却には買主の選定、売却価格の決定、契約締結など多くの手続が必要であり、相続人全員で進めようとすると、意見がまとまらず売却できないこともあります。

そこで、遺言書で遺言執行者を指定し、不動産の売却手続を一任しておくことがよくあります。

2.遺言執行者とは

遺言書があっても、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員が合意すれば、遺言とは異なる内容で遺産分割をすることができます。

そのため、例えば一部の相続人が他の相続人に圧力をかけて遺言どおりの分配が行われないこともあり得ます。

これに対し、遺言書で司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておけば、遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な手続を行う権限と義務を有し、相続人はその執行を妨げることができません(民法1022、1023)。

そのため、遺言の内容を確実に実現したい場合には、遺言執行者を指定しておくことが重要です。

3.事例

質問:清算型遺言において、遺言執行者が遺言者名義の不動産を売却し、買主へ所有権移転登記をする場合には、相続登記を経由する必要がありますか。

回答:必要です。

遺言者名義の不動産を売却し、その売却代金を相続人へ分配する旨の清算型遺言の場合には、まず相続人全員名義への相続登記を行う必要があります。

その後、
登記権利者:買主
登記義務者:相続人全員(登記名義人)
として、買主と遺言執行者の共同申請により、買主への所有権移転登記を行います。

この場合、相続人一人ひとりが売買契約や登記手続に関与する必要はなく、遺言執行者が相続登記から売却、所有権移転登記まで一貫して手続を進めることができます(全訂 設問解説 相続法と登記 著者:幸良秋夫)。

もっとも、遺言書に売却価格や売却先、仲介業者などの指定がない場合には、これらは遺言執行者が判断することになります。

ただし、著しく低廉な価格で売却するなど、不適切な売却を行った場合には、善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)違反となり、相続人から損害賠償責任を追及される可能性があります(民法1022Ⅱ、645)。

4.買主への所有権移転登記の主な添付書類

買主への所有権移転登記の主な添付書類は次のとおりです。
・遺言書(遺言執行者の資格証明書)
・遺言者の死亡を証する戸籍謄本等
・登記原因証明情報(売買契約書)
・登記識別情報(いわゆる権利証)
・登記義務者の法定代理人である遺言執行者の印鑑証明書
・買主の住民票
・司法書士等の代理人が登記を行う場合には委任状

5.相続人がいない場合

遺言者に相続人がいない場合であっても、遺言執行者が指定又は選任されているときは、相続財産清算人を選任する必要はありません。

この場合は、まず不動産を相続財産法人名義とする登記を行い、その後、買主と遺言執行者との共同申請により、売買による所有権移転登記を行うことができます(質疑応答・登研619号219頁)。

補足(実務上のポイント)

清算型遺言では、「誰が売却を進めるのか」が非常に重要です。遺言執行者を指定しておけば、相続人全員の協力を得ることなく、不動産の売却から登記まで一貫して手続を進めることができるため、相続人間の対立によって売却が滞るリスクを大きく減らすことができます。

一方で、遺言執行者には売却価格や売却方法について善管注意義務が課されるため、公正かつ合理的な条件で売却を行うことが求められます。


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