お客様からの相談で、「父の生前に兄や姉が父の預貯金を引き出して使っていた。」という話をよく聞きます。それを父のために使っていたのなら問題はないのですが、兄や姉の生活費や遊興費に使っていたのなら問題です。
そこで、このページでは、相続開始前の使途不明金があった場合の対処方法をご紹介します。
故人が亡くなった時点での財産は、相続財産となります。そのため、生前に現金が引き出されていた場合でも、特に遺産分割協議で考慮する必要はないと考えられます。特に、故人自身が消費したと明らかな場合は、遺産分割協議では通常触れられません。
しかし、故人Aの生前の預金管理を相続人Bが行っていた場合、問題が生じることがあります。この場合、AとBの間に預金管理に関する委任契約が成立している考えられます。そのため、Aの使途不明の預金について、Aは管理者であるBに対して、返還請求権(民法646Ⅰ)や損害賠償請求権(民法709)を取得します。そして、AのBに対する返還請求権や損害賠償請求権も相続財産となり、相続の対象となります。
このようなケースでは、遺産分割協議書に次のような条項を盛り込みます。
第◯条 相続人B及び相続人Cは、次の財産が被相続人A(令和◯◯年◯◯月◯◯日死亡)の遺産であることを確認し、これをBが取得するものとする。 ◯◯銀行◯◯支店◯◯預金(口座番号◯◯◯◯◯◯◯)の使途不明金500万円に係る被相続人AのBに対する返還請求権 |
この条項を遺産分割協議書に盛り込めば、AのBに対する返還請求権を相続人であるB自身が相続することになり、法律の世界では混同という状態が生じます。混同とは、債権者と債務者が同一になって債権が消滅することをいいます。要するに、この条項の事例では、Bが相続するお金が500万円減るということになります。
仮にBが使途不明金を認めなければ、「遺産分割調停」をしたり「遺産確認の訴え」を提起することになります。遺産確認の訴えを提起すると、使途不明金500万円に係る被相続人AのBに対する返還請求権も相続財産に含めて、相続分を計算することができます。
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