はじめに
故人の遺産を相続人全員の話し合いにより分配することを遺産分割協議といいます。このページでは、次の項目に分けて遺産分割協議についてご説明いたします。
※クリックすると各項目にジャンプします
遺産分割協議を始める前に、(1)遺言書調査、(2)相続人調査、(3)遺産調査が必要となります。これらの3つの調査が終了していないと、遺産分割協議を進めることはできません。
まずは、相続人たちで、故人の遺言書がないか探してもらいます。同時に、公証役場の遺言検索システムの確認と法務局に遺言書情報証明書の交付請求を行って、故人の遺言書の有無を調査します。
なお、相続人が故人の遺言書を見つけた場合でも、勝手に開封してはいけないことにご注意ください。
【関連知識】
「遺言書を見つけたらどうする?」
市役所で戸籍や住民票を収集し、相続人の調査を行います。この調査によって、故人の過去の結婚歴、離婚歴、養子縁組の経歴が明らかになります。家族も知らない相続人(養子や血縁のない兄弟姉妹など)が発見されこともあります。
故人の遺産の総額や内容が明確でなければ、遺産分割は行えません。不動産については、名寄帳という故人が所有している不動産の一覧表を市役所で取得して特定します。預金、株式、投資信託、保険、年金などに関しては、故人の通帳や郵便物などを手がかりに特定し、金融機関に残高証明書の請求を行います。故人との生前の関わりがない場合、遺品整理業者に依頼して遺産に関連する資料を発見してもらうことがあります。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。1人でも相続人が欠けていたら、その遺産分割協議は無効です。
誰が相続人となるかについては、下記をクリックしてください。
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「相続人の順位と割合を具体例で分かりやすく徹底解説!」
遺産分割協議をするには、遺産分割協議書を作成し、すべての相続人に署名・押印をしてもらわなければなりません。ところが、連絡が取れない相続人がいると署名・押印が揃いません。
このような場合には、その相続人の代理人となる、不在者財産管理人という人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。そして、選任された不在者財産管理人から署名・押印をもらうという流れになります。
【関連知識】
「不在者財産管理人について」
相続人が認知症である場合には、遺産分割協議書に署名・押印をすることができません。遺産分割協議書が何かを理解できる能力がないと考えられているためです。
このような場合には、その相続人の代理人となる、成年後見人という人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。通常は、弁護士・司法書士・社会福祉士が選任されますが、親族が選任されることもあります。親族が成年後見人に選任された場合において、その親族も相続人となる場合には、相続人間で利害が対立する関係にあります。そこで、認知症の相続人の代理人となる特別代理人という人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。そして、選任された成年後見人や特別代理人から遺産分割協議書に署名・押印をもらうという流れになります。
認知症の相続人から遺産分割協議書に署名・押印をもらったとしても、その署名・押印は無効です。後日、他の相続人から「あの遺産分割協議は無効だ!」と言われてしまうかもしれないので、やめておいた方が良いです。
【関連知識】
「成年後見人について」
未成年者が相続人である場合には、法定代理人(通常は父母)が遺産分割協議書に署名・押印をします。未成年者は、まだ、遺産分割協議書に署名・押印をして良いかどうかを判断する社会経験がないと考えられているためです。
ここで1つ注意が必要です。父母と一緒に未成年者の子どもが相続人となる場合には、父母は未成年者の子どもの代わりに遺産分割協議書に署名・押印をすることができません。父母と未成年者の子どもは、利害が対立し、父母に有利な様に遺産分割協議が行われてしまう可能性があるからです。
このような場合には、未成年者の子どもの代理人となる、特別代理人という人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。そして、選任された特別代理人から遺産分割協議書に署名・押印をもらうという流れになります。
【関連知識】
「特別代理人について」
相続人が海外にいる場合でも、遺産分割協議は可能です。1枚の遺産分割協議書にすべての相続人が署名・押印をしなければならない訳ではありませんから、例えば、「長男の署名・押印がある遺産分割協議書」と「次男の署名・押印がある遺産分割協議書」の2つの書類が揃えば、遺産分割協議はが成立です。
したがって、相続人が海外にいる場合には、遺産分割協議書の書式をメールや郵便で送付します。相続人には、その書式に署名していただきます。海外には印鑑証明書の制度が存在しないため、海外の日本大使館で署名証明書を発行してもらうことができます。その後、遺産分割協議書と署名証明書を日本に送付してもらえれば、めでたく遺産分割協議は成立です。
遺産分割協議に期限はありません。しかし、遺産分割協議は早めに行うべきです。なぜなら、遺産分割協議が長引くと、各相続人に不利益が生じる可能性があるからです。ここでは、それぞれの期限を過ぎると何が起こるのかについてご説明いたします。
3か月を過ぎると相続放棄をすることができなくなります。ということは、遺産より借金の方が多い場合でも、相続放棄をすることは許されず、故人が残した借金を免れることができなくなります。
【関連知識】
「相続放棄について」
法定相続分(民法によって定められた割合での分配)を基準として相続した場合、各相続人はひとまず、仮の相続税を申告・納税する必要があります。しかし、仮の相続税を納税する場合、配偶者控除などの控除を適用することはできません。
しかし、相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すると、後で遺産分割協議がまとまった際に、特例による控除の還付を受けることが可能です。ただし、この方法では後からもう1度、相続税に関する手続きが必要となり、ひとまず納税する仮の相続税が高額になるなどのデメリットがあります。
このデメリットを踏まえると、遺産分割協議はなるべく早く進め、それぞれが配偶者控除などの適用を受けた相続税を申告・納税することが望ましいです。
【関連知識】
「相続税について」
令和6年4月から、故人名義の不動産は相続人へと名義変更(相続登記)をしなければ、10万円以下の過料を科せられることになりました。
詳しくは、こちらをご覧ください。
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「相続登記について」
一般の方は法律知識がないので、相続人ではない親族が「私が相続人だ!」と言い張って家を占拠する場合があります。例えば、相続権のない孫が相続人である親に対して、「俺はじいちゃんの相続人だ!」なだと主張する場合です。
このような状況を5年間放置すると、孫に家を返せとは言えなくなってしまいます。早めに遺産分割協議をして、本当の相続人から孫に家を返すよう主張しましょう。
特別受益と寄与分は相続人間の不公平を解消するための制度です。
特別受益は、故人から生前に多額の贈与を受けた場合に適用される制度です。例えば、長男が故人から1,000万円の贈与を受けていた場合、それを無視して故人の遺産を法定相続分のとおりに分けると、次男からすると不公平です。そこで、その1,000万円は故人の遺産に加算し、相続人の取り分を計算する際に考慮されます。
具体例を見てみましょう。故人が1,500万円の現金を残して亡くなったとします。相続人は長男と次男の2人だけです。この場合、長男が生前に故人から1,000万円を受け取っている場合、その1,000万円は故人の遺産に加算されます。
したがって、故人の遺産は2,500万円になります。この2,500万円は相続人の法定相続分で分けることになります。今回は相続人が長男と次男の2人だけなので、それぞれの相続分は1/2となります。2,500万円に1/2を乗じると1,250万円となりますので、次男と長男はそれぞれ1,250万円ずつ相続します。
しかし、故人は1,500万円の現金しか手元に残していないため、この金額を分け合うことになります。したがって、長男は250万円を、次男は1,250万円を相続することになります。長男は生前に故人から1,000万円を受け取っているため、このように分配するのが平等です。
相続人の中で生前、故人の財産の維持または増加に寄与した者がいた場合には、例えば、長男が故人の生前に事業資金として1,000万円の資金援助をしたとします。それを無視して法定相続分どおりに分けると、今度は長男が不公平です。そこで、その1,000万円は故人の遺産から控除し、相続人の取り分を計算する際に考慮されます。
具体例を見てみましょう。故人が1,500万円の現金を残して亡くなったとします。相続人は長男と次男の2人だけです。この場合、長男が故人の生前に事業資金として1,000万円の資金援助をしている場合、その1,000万円は故人の遺産から控除されます。
したがって、故人の遺産は500万円になります。この500万円は相続人の法定相続分で分けることになります。今回は相続人が長男と次男の2人だけなので、それぞれの相続分は1/2となります。500万円に1/2を乗じると250万円となりますので、次男と長男はそれぞれ250万円ずつ相続します。
しかし、故人の遺産はまだ1,000万円残っています。これは、事業資金を援助してあげた長男が相続することになります。したがって、最終的に長男は1,250万円を、次男は250万円を相続することになります。長男は故人の生前に事業資金として1,000万円の資金援助をしていますから、このように分配するのが平等です。
故人が亡くなって10年が経過すると、特別受益と寄与分の主張ができなくなり、相続人によっては不公平な結果となります。
遺産分割の方法は相続人間で合意があるなら、どのように分けようと自由です。もし遺産分割協議が調わない場合には、家庭裁判所に遺産の分割を請求するとができます。家庭裁判所が決定する遺産分割の方法として、(1)現物分割、(2)価格分割、(3)代償分割があります。もちろん、これらの方法を相続人間の協議で決めることもできます。
現物分割とは、1つの物を平等に相続人間で分けることです。例えば、土地なら長男と次男で1/2ずつ持分を取得します。ただし、1つの物を2人で所有することになるので、争いの火種を子、孫の世代に残す危険性があります。
個人が残した財産を売却して得た金銭を分けることです。
例えば、1人の相続人が土地を取得し、その相続人が他の相続人に相続分に応じた金銭を支払うことです。
ところが、土地を取得する相続人に金銭を支払う余裕がないことがあり得ます。そのような場合には、土地を担保にお金を借り入れて他の相続人に支払うなど、金策をする必要があるでしょう。
相続で揉めるのは大体このケースです。土地を取得しない他の相続人にも、遺産を取得する権利は当然あります。
仮に、土地を取得する相続人を長男、他の相続人を次男とします。そして、長男は次男に支払うお金がありません。このような場合に、長男の側に立ってアドバイスをすると、長男は次男に対して、3(5)で説明した特別受益と寄与分を主張するのが良いでしょう。
例えば、「次男よ。お前は結婚の費用を援助してもらっただろう。それに私立大学の学費も出してもらったではないか。さらに大学は県外でアルバイトもせず、仕送りもたくさん貰っていただろう。その総額は1,000万円! それに比べて俺は、、、高卒で親の介護をして結婚もせず、、、、」という感じです。
ただ、言い方には注意してください。遺産分割協議においては、お互いの歩み寄りが大事です。人間性はともあれ、相手も自分と同じように、遺産をもらう権利があるということを忘れずに。
遺産分割協議は話がこじれると軌道修正が難しくなります。遺産分割協議を始める前に以下の3点に注意しましょう。
通夜や葬儀の際に遺産分割の話をするのは禁物です。これまでの遺産分割協議が進まない事例を見ていると、話を切り出すタイミングが悪かったケースが少なくありません。
また、故人と生前お付き合いがなかった相続人や、相続人ではない義理の娘や義理の息子が率先して遺産分割の話を切り出すと、「金が目当てか!」と話が拗れます。
まずは、故人とのお別れを優先しましょう。
相続は一生に1度、何もせず大金が手に入るチャンスです。やはりお金は貰えるならみんな欲しいです。自分の権利ばかり主張しても上手くいきません。相続人全員の意見を聞いた上で、法定相続分を基準に話を進めていくのが良いでしょう。
「私には寄与分がある」「いやお前には特別受益がある」と互いに躍起になって主張しても、いざ後述する遺産分割調停や遺産分割審判になれば、その主張がすべて認められることはほとんどありません。逆に相手の取り分が多くなったりもします。
遺産分割協議においては、相互の譲歩がなければ進展はありません。全ての関係者が譲歩することができない場合、遺産分割は困難となり、問題は次世代に先送りされることになります。大切なのは、相互理解と妥協の精神を持ちながら、公平な解決策を見つけることです。
遺産分割協議について、誤解や先入観を持たれている方が多いです。遺産分割協議を始める前に、どのような手順で遺産分割協議を進めるか、専門家にアドバイスを受けてから始めた方が良いでしょう。
そして、まずは、相続人同士で話し合いをすることです。相続人ではない義理の娘や義理の夫が話し合いに参加してあれこれ主張すると、ほとんどの場合で話が拗れます。
また、いきなり司法書士が話し合いに同席すると、相手は喧嘩が始まると勘違いをして身構えてしまいます。
以上のとおり、まずは相続人同士で話し合いです。
遺産分割調停や遺産分割審判を検討する方には、相続人同士の十分な話し合いが行われていないケースがあります。
例えば、手紙やメールなどの簡単なやり取りだけで相手と直接的な対話を行っていない場合や、何のやり取りもせずに相手の態度を決めつけてしまい、話し合いを放棄してしまっているケースがあります。
また、正確な相続に関する知識が欠如していたり、インターネットなどで得た誤った情報によって誤解が生じているため、相続人だけでの話し合いがうまく進まないこともあります。
さらに、専門家ではないのに中途半端な知識を持つ人(相続人の1人や相続人ではない義理の娘、義理の息子、親戚など)が介入し、話し合いが行き詰まってしまうこともあります。
このような状況では、すぐに調停や審判を申し立てるのは早計です。
そこで、当事務所では、司法書士が司会進行役となり、相続や遺言に関する法律をわかりやすく丁寧に説明します。相続税が発生する場合には、提携税理士も同席します。なお、司法書士は中立な立場で司会進行を行いますので、どちらかの相続人に肩を入れるということはありません。
そして、この会議で話し合いが成立した場合には、話し合いの内容を基に、遺産分割協議書として、正式な法律文書を作成します。
※税込み価格です。
※財産調査・遺言書調査は不要など、不要とお考えの項目については、お申し出ください。
🔶 岡山市・倉敷市・総社市・玉野市・瀬戸内市・備前市を中心に県内全域で対応可能です。特に岡山市と備前市のお客様から多くのお問い合わせを頂いております。
🔶 高齢の方や身体的に不自由な方にかかわらず、すべてのお客様に対して訪問相談サービスを提供しており、場所にとらわれず便利に司法書士をご利用頂けます。
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