はじめに
借金まみれの父が亡くなったら相続放棄をしようと検討しているお客様から、土地は母名義だが建物は父名義なので、相続放棄をすべきかどうか分からないというお声を頂きました。
そこで、このページでは、土地と建物の名義が違う場合の相続放棄について解説します。
目次 1.相続放棄をして相続人が誰もいなくなった場合 2.土地が父名義で建物が母名義の場合 3.土地が母名義で建物が父名義の場合 4.父名義の土地を他人名義の建物所有者に賃貸していた場合 5.他人名義の土地を父が借りていて、その土地の上に父名義の建物がある場合 6.父名義の土地と母名義の建物の両方に抵当権が設定されている場合 おわりに |
1.相続放棄をして相続人が誰もいなくなった場合
相続放棄をして相続人が誰もいなくなった場合、相続財産法人というものが成立します。相続財産法人を分かりやすく説明すると、相続放棄をされた故人の財産は法人となります。法人とは法律によって作られた人です。ということは、相続財産法人は人間です。
人間といっても身体がないので、触れ合うことはできませんし、頭や手足がないので相続放棄をした家に関する手続きをすることができません。
そこで、利害関係人からの申し立てにより、相続財産清算人という人が裁判所から選任されます。株式会社の社長みたいな人です。
その相続財産清算人が相続放棄された故人の財産を売却するなどします。その売却代金を故人の債権者に配当したり、国庫に帰属させたりします。
2.土地が父名義で建物が母名義の場合
この場合に父を相続放棄すると、土地は相続財産法人となり相続財産清算人が選任されます。そして、相続財産清算人が土地を売却して、その売却代金は父の債権者に配当されます。
土地が売却されると、他人の土地の上に母名義の建物が建っていることになり、土地を不法占有している状態になってしまいます。その結果、母名義の建物は次の選択肢を迫られることになります。
① 建物を壊す
② 新しい土地の所有者に土地を借りる
新しい土地の所有者が、建物を壊して更地として転売したい、あるいは新しい建物を建てたいと考えた場合、母名義の建物は取り壊さなけれなりません。
新しい土地の所有者が、母に土地を貸して賃料を貰った方が有利と考えた場合、新しい土地の所有者と賃貸借契約を締結することになります。
これらの状況を避けるためには、母が土地を購入する、親戚や知人に代わりに土地を購入してもらうなどの方法が考えられます。
なお、土地に抵当権が設定されていて競売となった場合も同様の結論となります。
3.土地が母名義で建物が父名義の場合
この場合に父を相続放棄すると、建物は相続財産法人となり相続財産清算人が選任されます。そして、相続財産清算人が建物を売却して、その売却代金は父の債権者に配当されます。
もっとも、この場合に建物を売却しようとしても、買い手が現れないことが予想されます。なぜなら、建物を購入したとしても土地の使用権限を取得できないため、土地の所有者である母に建物を壊せと言われてしまうからです。
もし建物を購入しようとしている人がいるのであれば、母は建物の購入予定者と土地の貸借契約を締結して、賃料をもらっても良いかもしれません。
また、母が父名義の建物に住み続けたいのであれば、母が自分で建物を購入する、親戚や知人に代わりに建物を購入してもらうなどの方法が考えられます。それに、占有屋みたいな人が購入して立ち退き料を請求されたりしたら面倒です。
なお、建物に抵当権が設定されていて競売となった場合も同様の結論となります。
4.父名義の土地を他人名義の建物所有者に賃貸していた場合
この場合に父を相続放棄すると、土地は相続財産法人となり相続財産清算人が選任されます。そして、相続財産清算人が土地を売却して、その売却代金は父の債権者に配当されます。また、土地に抵当権が設定されていたら、競売となってしまいます。
以上の場合において、新しい土地の所有者は、父と建物所有者が締結していた賃貸借契約を承継することがあります。
(1)賃貸借契約を承継する場合
賃貸借契約を承継する要件は、父名義の土地の上に借地権者である建物所有者が登記されている建物を所有しているときです(借地借家法10、民605の2)。この場合に新しい土地の所有者は、承継した賃貸借契約の存続期間内は、建物を壊せと主張することができません。
(2)賃貸借契約を承継しない場合
競売の場合において、建物所有者が建物を登記したのが抵当権設定後であれば、賃貸借契約の承継はありません(民177)。
また、借地権者が自分以外の登記名義で建物を所有していた場合も賃貸借契約の承継はありません(借地借家法10、民605の2)。したがって、新しい土地の所有者に建物を壊せと言われてしまうかもしれません。
この場合の対処法としては、建物所有者が自分で土地を購入する、新しい土地の所有者と賃貸借契約を締結する、抵当権者に第三者弁済するという方法が考えられます。
なお、賃貸借契約を承継しない場合であっても、新しい土地の所有者が賃貸借契約を承継した方が自分にとって有利だと判断した場合には、相続財産清算人と合意により、賃貸借契約を承継することができます(民605の3)。この場合において、建物所有者の承諾は不要です。
5.他人名義の土地を父が借りていて、その土地の上に父名義の建物がある場合
この場合に父を相続放棄すると、建物は相続財産法人となり相続財産清算人が選任されます。そして、相続財産清算人が建物を売却して、その売却代金は故人の債権者に配当されます。また、建物に抵当権が設定されていたら、競売となってしまいます。
仮に父名義の建物に母が住んでいたとしてます。この場合の対処法としては、母が建物を購入する、親戚や知人に代わりに建物を購入してもらう、抵当権者に第三者弁済するという方法が考えられます。
なお、建物を取得した新しい建物の所有者は、建物の所有権とともに土地に対する賃借権も取得します(民87Ⅱ)。
しかし、土地の所有者は父だからこそ土地を貸していたのです。そこで、新しい建物の所有者は、土地所有者に賃借権の取得を認めてもらう(承諾を得る)必要があります(民602)。
この場合において、土地の所有者が不利となるおそれがないにもかかわらず、新しい建物の所有者の賃借権の取得を承諾しないことがあります。そのような場合には、新しい建物の所有者は、裁判所から、土地の所有者の承諾に代わる許可を得ることができます(借地借家19Ⅰ、20Ⅰ)。
6.父名義の土地と母名義の建物の両方に抵当権が設定されている場合
この場合には、父名義の土地と一緒に母名義の建物も競売となってしまいます。対処法としては、母が土地と建物を購入する、親戚や知人に代わりに購入してもらう、抵当権者に第三者弁済するという方法が考えられます。
おわりに
土地と建物の名義が違う場合には、相続放棄後の権利関係が複雑になります。相続放棄は裁判所に書類を提出するだけの簡単な作業ではありません。相続放棄をする前とその後の段階が重要なのです。
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