1.縁を切った子どもに相続させたくない!
親子といえども別の人間同士です。残念ながら、修復不可能なほど親子関係がこじれてしまうことは、いつの時代もあります。親不孝な子どもに相続させたくない、ほとんど交流が無かった前妻の子どもに相続させるのは嫌だ、というお客様がたまに相談に来られます。
2.法的に親子の縁は切れない
親子の縁を切りたいから、子どもを自分の戸籍から抜きたいというお客様がたまにおられます。そのようなお客様は、戸籍を抜くということを、自分の戸籍から子どもの名前を抹消するというイメージを持たれています。
しかし、そのような手続きは存在しません。親子はどこまでいっても親子のままです。特別養子縁組(15歳未満)や間違えて他人の子どもを実子と届け出たなどという特殊な例外を除き、親子の縁を切るという法的な手続きは存在しないのです。
3.遺言書について
法的に親子の縁を切ることが出来なくても、遺言書を作成して、仲の悪い子どもに相続させないことは可能です。例えば、長男は嫌いだから次男にすべて相続させるといった遺言書を作成することができます。また、孫やお世話になった人、セカンドパートナー、内縁の妻、慈善団体などの第三者への遺言書を作成することもできます。
なお、遺言書については、こちらをご覧ください。
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4.遺留分について
遺留分とは、相続人を保護するために、必ず遺産の一定額を何らかの方法で相続人に保証する制度です。原則、1/2に子どもの法定相続分を乗じた割合が遺留分の割合となります。例えば、相続人が長男と次男の2人だけなら、長男と次男の法定相続分はそれぞれ1/4ずつですから、1/2×1/4で長男と次男はそれぞれ1/8ずつ遺留分割合が認められます。
父が、「長男はワシが死んでも絶対許さん。次男に全財産の1,000万円を相続させる。」という遺言を残したとしても、長男は次男に1,000万円×1/8で、125万円を自分に払うよう請求することができます。
なお、父の生前に、長男が1/8の遺留分を放棄することもできます。しかし、父が長男に圧力を加えて遺留分を無理やり放棄させるということを防ぐため、裁判所の許可が必要です。
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5.相続人の廃除について
実の我が子といえども、親に対して暴力を振るったり、「死ね!殺すぞ!」などと暴言を吐く、とんでもなく酷い子どもだっています。そのような子どもに対しては、ご自身の生前は家庭裁判所に請求して、ご自身の死後は遺言書に書いておくことによって、子どもに4.で説明した遺留分すら相続させないようにすることができます。これを相続人の廃除といいます。
なお、単に仲が悪いからでは認められません。子どもが親に対して、暴力を振るったり、暴言を吐いたりなどをしたことによって、親子関係が修復不可能になったことが要件です。
6.遺言書はいつでも書き直せる
親が病気になって親の死を間近にすると、それまで仲が悪かったお子様も泣いて今までの親不孝を後悔したりすることがあるそうです。そんな時、勢いで子どもに相続させない!と遺言書を書いてしまっていたとしても、新しい遺言を作成すれば、前の遺言と矛盾する部分については、新しい遺言書が優先されますから、ご安心ください。
7.遺言執行者について
特定の子どもに遺産を相続させたくないご事情がある場合は、遺言執行者を指定することをお勧めします。遺言執行者は、遺言内容を実行する責任を持つ人物です。
専門家が遺言執行者となる場合、その専門家は遺言に書かれた通りに財産の分配手続きを進めます。司法書士が指定されている場合、相続できなくなった子どもたちも感情的になりにくくなり、遺留分を寄こせ!といったトラブルが起こりにくくなるでしょう。
また、慈善団体への寄付などの場合、相続人が必要な手続きを行ってくれない可能性がありますので、やはり遺言執行者が必要です。
8.生前贈与について
遺言以外の方法として、妻や長男に生前贈与をして、次男が相続する財産を無くすことができます。ただし、亡くなった日より10年前までの相続人対する生前贈与は、4.で説明した遺留分の対象となってしまうので、完璧な対処法とはなりません。なお、相続人以外に対する生前贈与は、亡くなった日より1年前までの生前贈与が遺留分の対象です。
また、生前贈与をすると、贈与を受けた人は特別な利益を得たということで、その利益を他の相続人に返還する必要が生じる可能性があります。これを特別受益の持ち戻し計算といいます。なお、遺言で特別受益の持ち戻し計算をしないとすることも可能です。
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