相続

相続人の中に精神疾患の方がいる場合

はじめに

 相続に関わる手続き、例えば故人名義の不動産や預貯金の名義変更や解約においては、相続人全員が協力して遺産分割協議を行うことが必要です。この遺産分割協議は、全ての相続人が参加しなければならず、一人でも欠けていると無効とされます。
 また、相続人の中に精神疾患を抱える方がいる場合、その疾患の程度によっては、その方が遺産分割協議を適切に行う能力がないと判断されることがあります。この場合、遺産分割協議が行われても後に裁判で無効と判断される可能性があるため、注意が必要です。

1.精神疾患を持つ方が遺産分割協議に参加する際の注意点

 精神疾患を持つ方が遺産分割協議に参加したとしても、必ずしも無効とされるわけではありません。精神疾患にはさまざまな種類があり、その人が自身の状態を理解し、遺産分割協議の内容について判断できる場合には参加が可能です。自身が署名や押印を行うことでどのようなメリットやデメリットが生じるかを理解し、その判断ができるのであれば、遺産分割協議に参加できます。
 例えば、認知症を抱える相続人が遺産分割協議に参加する場合です。重度の認知症の場合、物事を理解する能力が欠けていると考えられるため、遺産分割協議書に署名や押印を行っても、その協議は無効とされます。
 ただし、認知症の状態も軽度から重度までさまざまです。例えば、まだら認知症の場合、朝と夕方で症状が異なることがあります。朝の比較的状態が安定している時に署名・押印をした遺産分割協議書は有効です。しかし、症状が悪化した夕方においては判断力を欠く可能性があるため、その時間帯に行った署名や押印は無効とされるでしょう。
 そこで、精神疾患を持つ方が遺産分割協議に参加する際には、後々裁判となって無効とならないように、次のような対策をしておくことが望ましいでしょう。

・その時の様子を録画しておく
・医師の診断書を取得しておく
・医師に立ち会ってもらう

 なお、認知症の簡易診断に使われる長谷川式認知症スケールというものがあります。当事務所もお客様の認知機能を確認する際の判断基準の1つとしています。
(参考:一般社団法人日本老年医学会「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」)

2.判断能力を欠く相続人がいる場合の対応

 判断能力を欠く相続人がいる場合の対応として、(1)成年後見人を選任する、(2)法定相続分で相続する、(3)亡くなるまで待つ、といった3つの方法が考えられます。

(1)成年後見人を選任する

 1つ目の方法として、判断能力を欠く相続人の代理人となる、成年後見人という人を家庭裁判所に選任してもらう方法があります。成年後見人であれば、本人を代理して遺産分割協議書に署名・押印をすることができます。
 ただし、ひとたび成年後見人を選任すると、成年後見人に対する報酬が毎年最低20万円~発生します。その方が亡くなるまで報酬を支払い続けなければならないので、よく検討することが必要です。
 また、本人の法定相続分は確保しなければなりません。例えば、相続人が兄弟4人で内1人が判断能力を欠く相続人で成年後見人が選任されているとします。そのような場合に、1,000万円の不動産の相続登記を自分の単独名義にしたいのであれば、判断能力を欠く相続人に250万円の現金を渡すなどの代替措置が必要となります。

(2)法定相続分で相続する

 2つ目の方法として、法定相続分で相続する方法があります。法定相続分で相続するのであれば、遺産分割協議をする必要がありません。例えば、故人名義の不動産を兄弟4人で1/4ずつの割合で登記をすることができます。
 また、ABCDという4人兄弟の相続人がいるとして、Dが判断能力を欠く状態にあるとします。この場合に、BCがAに自分の相続分を譲渡して、Aが3/4、Dが1/4という割合で登記をすることもできます。

(3)亡くなるまで待つ

 3つ目の方法として、亡くなるまで待つという方法があります。判断能力を欠く相続人が亡くなれば、その方の相続権は妻+子⇒親⇒兄弟姉妹の順番で移っていきます。つまり、その方が亡くなるまで待って、その方の相続人と遺産分割協議をするということです。
 ただし、相続登記は故人が亡くなってから3年以内にしないと罰金がありますし、種々の権利が時効により消滅してしまう可能性もあります。
 くれぐれも専門家の判断を仰ぐようにしてください。

終わりに

 いかがでしたでしょうか。相続人の中に精神疾患の方がいたとしても、必ずしも相続手続きができない訳ではありません。ただし、難しい法律判断が必要ですので、司法書士などの専門家の助言を得ながらお手続きを行うようにしてください。

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