相続

離檀と墓地使用の可否

 やむを得ない事情から、信奉している宗教や宗派と異なる寺に埋葬してほしい場合、そのようなお願いは可能でしょうか?
 まず、寺院墓地の場合、墓地使用権を取得または承継するためには、檀家になる必要がある場合が一般的です。
 では、寺院墓地を管理する寺院などは、他の宗教や宗派を信仰する者からの埋葬などの要求を拒むことができるのでしょうか。祭祀承継者が離檀や改宗した事情が、墓地と埋葬に関する法律13条における「正当な理由」に該当するのかが問題となります。
 当時の厚生省公衆衛生局長からの照会に対する内閣法制局の回答(昭35.2.15法制局一発第1号)によれば、①同法13条の「正当な理由」について、宗教団体が経営する墓地に他の宗教団体の信者が埋葬または埋蔵を求めた場合、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの要求を拒むことは、「正当な理由」によるものとは認められない旨回答されています。
 ただし、②埋葬または典礼の方法については、同法13条はあくまでも埋葬または埋蔵行為自体について依頼者の要求を一般に拒んではならないと規定しており、埋葬または埋蔵の実施方法についてまで、依頼者の一方的な要求に応じるべきではなく、典礼の方法は墓地の経営者と依頼者との合意に基づいて決定されるべきであるとしています。
 したがって、宗教団体が墓地を経営する場合、その宗派の典礼に従うことを墓地の管理者が決定することは許容され、他の宗教団体の信者である依頼者が、自分の宗派の典礼にこだわっても、墓地の管理者はその要求に応じる義務はないとされています。
 そして、両者が典礼方法に関する主張を譲らない場合には、結局、埋葬依頼者は埋葬または埋蔵の要求を撤回することを余儀なくされますが、このような事態は同法13条とは無関係と考えられます。
 上記の解釈に基づいて、裁判例(津地裁S38.6.21)では、Y寺院を離檀した元信者Xが、Xの親族の遺骨をXがY寺院内に所有する墳墓に埋葬することをY寺院に要求し、その埋葬方法として離檀後に入信したZ教の無典礼での埋葬方法を求めた場合、Y寺院がこれを拒否したという事案において、「従来から寺院墓地に先祖の墳墓を所有する者からの埋葬蔵の要求に対しては、寺院墓地管理者は、その者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができない。ただし、右埋葬蔵が宗教的典礼を伴うことにかんがみ、右埋葬蔵に際しては寺院墓地管理者は自派の典礼を施行する権利を有し、その権利を差し止める権限を依頼者は有しない。従って(1)異宗の典礼の施行を条件とする依頼(2)無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼(異宗の典礼は施行しないが、当該寺院の典礼の施行も容認しない趣旨の依頼)このような依頼に対しては、寺院墓地管理者は自派の典礼施行の権利が害されるという理由によってこれを拒むことができるし、右のような理由による拒絶は墓地法13条にいう拒絶できる正当な理由にあたる。」と判示しました。
 また、他の裁判例(東京高裁H8.10.30)でも、離檀や改宗した者からの要求であっても、寺院は埋葬の要求を拒否することはできず、無典礼での埋葬が可能である旨を判示しています。
 要するに、墓地や埋葬に関する法律においては、他の宗教や宗派の信者が異宗の典礼を伴う埋葬方法を要求した場合でも、基本的にはその要求を拒むことはできないという判決が示されています。
 ただし、埋葬の際に宗教的な典礼が行われる場合、墓地の管理者は自己の宗派の典礼を施行する権利を持ち、その権利を依頼者が差し止めることはできません。そのため、依頼者が無典礼での埋葬を希望する場合、それを拒絶する理由としては正当な理由とは認められません。
 このような法的背景のもとで、信仰に関する異なる要求が対立する場合、墓地の管理者と依頼者との合意が最終的な決定要因となります。つまり、墓地の管理者と依頼者が典礼方式について合意できない場合、依頼者は埋葬の要求を撤回することを余儀なくされる可能性があります。

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