相続

お墓の相続について

はじめに

 お墓の相続は、土地や家、預貯金などと性質が全く異なります。

1.墓地の性質

お墓を掃除する子ども

 「墳墓」とは、墓石や墓碑、土葬の場合の棺桶など、遺体や遺骨を葬っている設備のことを指し、「墓地」は墳墓を所有するための敷地を指します。
 民法897条1項は、祭祀財産として、系譜、祭具、墳墓を挙げており、墳墓は祭祀財産に該当します。よって、墳墓は相続の対象とはならず、遺産分割協議や相続放棄をしても、別途、墳墓は承継することができます。なお、祭祀財産とは、祖先を祀るために必要な財産のことで、祭祀とは、祖先や神々を祀(まつ)ることです。
 他方、墓地については「墳墓」に含まれるか争いがありましたが、墳墓がその敷地である墓地から独立して、墳墓のみではその本来の機能を果たすことができないことから、「社会通念上一体のものととらえてよい程度に密接不可分の関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地は、墳墓に含まれると解するのが相当である」とされています(広島高H12.8.25)。
 さらに墓地の使用権や所有権、墳墓に埋葬されている先祖や被相続人の遺骨についても、「墳墓」に準じるものとして、祭祀財産に含まれると解されています。
 よって、墳墓、墳墓と密接不可分の範囲内の墓地、墓地使用権、墳墓に埋葬済みの遺骨等は、相続財産には含まれず、祭祀財産として祭祀主宰者が承継することになります。墳墓や墓地の管理に当たっては相続対象ではないことに注意して管理を行う必要があります。
 なお、祭祀財産や祭祀主宰者については、下記の「2.祭祀財産」をご覧ください。

【関連知識】
相続放棄をしても引き継げるもの(形見、仏壇などの祭祀財産、遺体・遺骨、墓地)

2.墓地の調査

エンディングノート

 墓地、墳墓などの存否、場所、権利関係などを調査する際には、遺言書やエンディングノートに死後の埋葬先や供養方法の要望、祭祀承継に関する記載がある場合があるため、その内容を確認します。
 また、墓地使用権を示す証書や書類、被相続人の親族を埋葬した際の書類、墓地を管理する団体から送られてきた利用料や法事に関する資料、墓地の維持費の領収書などが自宅内や金庫内に保管されていることが多いため、これらの調査も行います。
 さらに、親族、友人、地域の縁者などが墓地や菩提寺に関する情報を持っていたり、福祉関係者が生前に被相続人から「お墓」の話を聞いていたりすることもあるため、必要に応じて聞き取り調査を実施します。

3.墓地使用権の法的性質

判例を勉強する司法書士の手元

 墓地の使用権については、公営墓地、寺院墓地、私営(民営)墓地といった墓地の形態によって法的性質が異なります。
 公営墓地とは、都道府県や市町村などの地方公共団体が運営・管理している墓地を指します。公営墓地使用権の法的性質については、地方公共団体が、条例や規則などで定めている使用条件に従って、地方公共団体に対して継続的な使用を求めることができる一種の債権的権利とされています。
 寺院墓地とは、各宗派の寺院が運営・管理している墓地を指し、同一宗派に属する檀信徒のみに墓地使用を認める特徴があります。寺院墓地の墓地使用権の法的性質については、裁判例においても意見が分かれており、永代借地権、使用貸借権、地上権、特殊な権利、慣習法上の物権などの異なる見解が存在しています。
 私営(民営)墓地は、財団法人や宗教法人などの民間団体が運営・管理している墓地を指します。私営(民営)墓地における墓地使用権は、墓地使用契約や承継、譲渡、時効取得などによって設定されます。墓地使用権は、墓地内の一区画を使用する権利であり、通常、永代使用料を支払うことで取得されます(ただし、永代使用料は実際には「永代」ではなく、使用規則により期間が設定されていることが一般的です)。また、墓地使用権は代々にわたって受け継ぐことができます。管理料など、墓地の施設や設備を維持管理するための費用が発生しますが、納付方法は寺院や霊園により異なります。いずれにせよ、墓地購入後に継続して負担される費用です
 なお、裁判例においては、私営(民営)墓地における墓地使用契約を賃貸借契約に類似する契約とみなし、信頼関係の破壊の法理を適用した判例も存在します。

4.墓地の承継方法(相続手続き、名義変更)

数珠と万年筆

 墓地を承継する場合には、まず祭祀承継者を決定する必要があります。祭祀承継者は、遺言書、慣習、関係者間の協議、調停、審判などによって決定されます(民法897条①)。ただし、墓地や霊園には使用規則などが存在することが一般的であり、祭祀承継者がこれらの要件を満たすかどうかを確認する必要があります。
 さらに、寺院墓地の場合、墓地使用権を取得・承継するためには通常、檀家になる必要があります。檀家としての地位を得るためには、当該寺院の教義を信仰し、寺院によって行われる葬儀や法要などに長期間にわたり協力することが求められます。
 したがって、寺院墓地を承継する際には、信仰の要件やお布施の金額など、規則や慣習を慎重に確認する必要があります。
 最近では、寺院併設の墓地でも、檀家である必要がない無宗派の墓地区画や納骨堂を設けている場合もあるため、寺院に詳細な使用条件を尋ねることが重要です。
 なお、祭祀承継者が決定し、名義書換えを行う場合に必要な一般的な書類は以下の通りです。
①承継使用申請書(名義変更申請書)
②墓地使用許可証や永代使用承諾証など、墓地使用権を取得した際に発行された書類
③旧名義人の死亡の事実が記載された戸籍謄本(全部事項証明書)など
④祭祀承継者の戸籍謄本(全部事項証明書)および住民票
⑤祭祀承継者の印鑑登録証明書および実印
⑥祭祀承継者であることを証明する資料(先代の祭祀主宰者との関係を示す戸籍謄本、葬儀の領収証など)
⑦祭祀承継者であることを証明するもの(先代の遺言書、親族の同意書、家庭裁判所での審判書など)
 これらの必要書類を墓地の管理者に提出することで、墓地の承継(名義変更)手続きを行うことができます。名義変更に際して、手数料が必要な場合があります。手数料の金額は、墓地や霊園によって異なり、公営墓地の場合は数百円から数千円程度、民営墓地の場合は数千円から1万円以上かかることもあります。また、寺院墓地の場合には、名義変更の際にお布施をすることも一般的です。金額は寺院によって異なるため、寺院に直接確認することがおすすめです。

5 離檀と墓地使用

 他の宗教団体の信者であることのみを理由として埋葬を拒むことは、墓地、埋葬等に関する法律13条の「正当な理由」に該当せず、当該宗教団体以外の者も埋葬を求めることができますが、当該墓地の宗派以外の埋葬方法や典礼を当然に要望することはできません。
 詳細については下記をご覧ください。

【関連知識】
離檀と墓地使用の可否

6.墓じまい

 墓じまいとは、承継者がいないなどの理由から墓を解体したり撤去したりして墓地を整理し、寺院や霊園に戻す手続きのことです。この手続きは、必然的に改葬を伴います。
 詳細については下記をご覧ください。

【関連知識】
墓じまいの手続き

おわりに

 いかがでしたでしょうか。相続手続きでは、家や土地、預貯金に加えて、お墓をどうするかをも話し合わなければならないのです。ぜひ専門家のアドバイスを受けながら安心してお手続きを進めてください。

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