相続

株の相続について

1.株式の調査方法

株主優待券

(1)上場会社の株式

 被相続人が上場会社の株式を保有していた場合、被相続人の株式保有状況を確認するために、被相続人が証券口座を開設していた証券会社または信託銀行から、定期的に届く取引残高報告書や配当金計算書などを入手します。
 また、法定相続人または遺言執行者は、証券保管振替機構に必要書類を郵送することで、被相続人名義の証券口座に関する情報(口座を管理している証券会社または信託銀行の名称など)を開示してもらうことができます(証券保管振替機構ホームページ「必要書類一法定相続人による請求一」参照)。

【法定相続人の必要書類】
① 開示請求書(証券保管振替機構ホームページからダウンロードするか、電話して郵送で送ってもらう。)
② 開示請求者の本人確認書類(運転免許証、健康保険証等)
③ 法定相続情報一覧図(あるいは、被相続人と開示請求者との関係を示す戸籍謄本(全部事項証明書)等)
④ 被相続人の住所の確認書類(被相続人の本人確認書類、住民票の除票、戸籍の附票、被相続人宛の議決権行使書、配当金計算書等の株式関係書類など)

【遺言執行者の必要書類】
① 開示請求書
② 遺言執行者の印鑑登録証明書(遺言執行者が司法書士等の場合は職印証明書)
③ 遺言書
④ 遺言者の除籍謄本(除籍全部事項証明書)
⑤ 遺言者の住所の確認書類

(2)非上場会社の株式

 非上場会社の株式については、株券や株式譲渡契約書などの文書を通じて、保有状況を確認します。また、被相続人が自ら経営していた会社の株式については、当該会社の原始定款、株主名簿、決算書類などを調査することで、株式の数量などを確認することができます。

(3) 共通する確認方法

 上場株式と非上場株式の両方について、通帳の記録や郵送されてきた郵便振替支払通知書などを通じて、特定の会社からの配当金の受け取りが確認できれば、当該会社に株式の保有状況を問い合わせる方法も考えられます。

2 遣産分割未了の株式にかかる権利行使

家系図

 相続財産にある株式は、株主たる資格に基づいて会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主は、株主たる地位に基づいて、いわゆる自益権と共益権を有するのであって、このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、相続発生によって当然分割はされず、遺産分割未了の間は、法定相続人らによって準共有されている状態となります(最判S45.1.22、最判H26. 2.25)。
 したがって、遺産分割協議がされるまでの間は、会社法106条に基づき、共同相続人間で株主権を行使する権利行使者を指定し、その権利行使者の氏名または名称を会社に通知することが必要があります。そして、その権利行使者が株主総会に出席し、議決権を行使します。なお、権利行使者の選定は、相続分に応じた持分の過半数で決定します(最判H9.1.28)。選定された権利行使者は、自己の判断に基づき全株式について権利行使をすることになります(最判H27. 2.19)。
 なお、会社が被相続人の株式に関する権利行使を承認した場合、権利行使者の選定は不要です(会106但書)。ただし、議決権の行使の内容は、原則、株式の管理に関する行為として共有の規定(民252本文)に沿って、持分の過半数で決定されます(最判H27. 2.19)。
 また、相続財産清算人の場合、権限外行為(民953、28)として株主権を行使することの可否についての裁判例が存在しないため、家庭裁判所と協議をする必要があります。

3.配当金支払請求権の取扱い

電球とコイン

 相続前に発生した配当金の支払い請求権が、相続が始まるとどう扱われるかについて、①相続分に応じて当然分割されるという見解と、②相続前に発生した配当金の支払い請求権は実質的に株式の所有権であるため、株式と同様に当然分割されないという見解に分かれています。
 いずれにしても、実務上は、金融機関が共同相続人の相続分に応じた配当金支払請求に応じないことが多く、その場合は、上記2の議決権行使の場合と同様に、権利行使者を定めて会社に通知した上で、権利行使を行うことになります。
 また、相続が始まった後に発生する配当金の支払い請求権についても、分割されるかどうかについての見解が分かれており、実務上、多くの場合において金融機関は共同相続人の相続分に応じた配当金支払請求に応じないため、権利行使のためには権利行使者の指定が必要となります。

4.上場会社の株式の評価方法

上場会社

 遺産分割における相続財産の評価の基準日は、遺産分割協議の時点とされているため、上場会社の株式の場合は、当該時点における金融商品取引所が公表する株価ということになります。実務では、遺産分割協議の際に相続が開始した日を評価基準日とするなど、氷塊基準日をいつにするかの合意をし、その評価基準日で株価を評価し、また、株式を売却し、その売却代金を相続人全員で分配することがよくあります。
 なお、相続税の申告においては、相続財産の評価基準日は死亡日です。上場株式については、通常、死亡日の最終取引価格が評価に使われます。ただし、死亡日の終値が、以下の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します(評基通168~172)。
① 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
② 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
③ 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

5.非上場株式の評価方法

中小企業

 非上場会社の株式については、株式市場における株価が定められていないため、その評価には、①純資産方式、②類似業種比準方式、③収益還元方式、④配当還元方式などの各種手法を用いて評価することになります。
 任意交渉の場合、一般的には相続税の申告における評価額を使うことが多いです。この評価額は、国税庁の財産評価基本通達に基づいて、会社の規模などに応じて算定されます。
 また、資産管理会社の株式については、通常、実質的には会社を通じて資産を保有していると見なされ、純資産方式によって評価されることがあります。
 しかし、任意交渉や遺産分割調停で合意が達成されない場合、裁判所が鑑定士を選任して鑑定を行い、その結果に基づいて評価が定められることがあります。ただし、鑑定費用が高額になるため、注意が必要です。

6.株式の承継の方法

パソコンとフセン

 上記の通り、相続財産に含まれる株式は、当然分割されません。
 遺言書で遺産分割方法が指定されている場合、その指定に従って株式が承継されます。 
 他方、遺言書に指定がない場合、譲渡制限株式であったとしても会社の承認を経ることなく権利を承継することができますので、会社に株式の名義書換えを請求することになります。
 なお、相続による承継の場合は、会社に対して権利行使をするのに株主名簿の名義書換えまでは不要です(東京高裁H29.2.22 )。

7.上場会社の株式の承継

上場会社

 上場会社の株式を承継するためには、被相続人が保有していた証券口座を管理している金融機関で名義書換手続き(株式の移管手続き)を行う必要があります。この手続きを進めるには、金融機関から必要な書類を取り寄せて提出します。同時に、未払の配当金がある場合には、その支払いについても同時に請求することができます。
 ただし、承継者が自身の証券口座を持っていない場合、新たに口座を開設する必要があります。被相続人の保有していた証券口座を名義変更して利用することはできない点にご注意ください。

8.非上場会社の株式の承継

中小企業の打ち合わせ

 非上場会社の株式については、株式の発行元である会社に直接名義書換請求を行う必要があります。まず、株式発行元の会社に連絡を取り、必要な書類を取り寄せ、名義書換手続きを進めます。この際、未払の配当金があれば、同時にその請求も行います。
 非上場会社の株式に関しては、その発行会社の定款に規定がある場合、相続の開始に伴って売渡請求(会174)が行われる可能性があることに留意してください(詳細は、下記9参照)。

9.相続等に伴う売渡請求

中小企業の取引

 譲渡制限株式について、発行元会社は、定款に定めることによって、相続その他の一般承継によって株式を取得した者に対して、当該一般承継があったことを知った日から1年以内の間に当該株式を自社に売り渡すよう請求することができます(会社174~176) 。
 売却請求を行う際には、株主総会で特別決議を行い、売却対象の株式数と対象者を指定する必要があります(会社175Ⅰ、309Ⅱ③)。この株主総会において、売却対象者は議決権を行使することができません。
 売却価格は、まずは当事者間で協議をして決定します。協議が整わないときには、会社又は売渡請求の対象者が、売渡請求の日から20日以内に裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができ、その場合は、裁判所が、会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を定めます(会177Ⅰ~Ⅳ)。
 ただし、売却価格は、売却の効力が発生する日の分配可能額を超えてはなりません(会461Ⅰ⑤)。
 協議による売買価格が合意に達せず、裁判所による売買価格の決定の申立ても期限内に行われない場合、売却請求は効力を失うので、この点に注意が必要です(会177)。

10.相続財産清算人の場合(非上場株式の処分について)

家庭裁判所

 相続財産管理人が管理する遺産の中に非上場株式があるときは、購入希望者がいれば、上記5の評価額などを参考にして価格を定め、権限外行為許可審判を取得の上で売却します。
 購入希望者がいない場合には、清算手続等を検討する必要がありますので、家庭裁判所と協議しながら手続を進めるようにしましょう。

※参考書籍
「相続財産 管理・承継の実務/新日本法規/編集 相続財産管理・承継実務研究会」

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