相続

預貯金の相続について

はじめに

 相続が発生すると、必ずと言っていいほど、預貯金の相続手続きが必要となります。そこで、このページでは、預貯金の相続手続きについて、どのような点に注意すべきかまとめました。

目次
1 預貯金の調査
2 残高の確認
3 金融機関への届出
4 遺産分割前の預貯金の取り扱いと払戻し
5 預貯金の権利消滅等
(1)郵政民営化前の定期性貯金の権利消滅
(2)休眠預金等(休眠預金等代替金)
(3)消滅時効
6 残高の少ない口座の管理

1.預貯金の調査

引き出しの通帳

 被相続人の自宅および関連の場所を捜索し、通帳やキャッシュカードなどを確認します。また、被相続人の遺言書、エンディングノート、メモ、家計簿、生前の支援者、親族からの情報などを収集し、預貯金の存在と金融機関名(可能であれば支店名と口座番号まで)を調査します。
 さらに、被相続人宛に届く郵便物も調査します。たとえば、年金、税金、社会保険料、各種料金の引き落し通知書には、引き落し口座の支店名が直接記載されている場合があります。また、郵便物から判明した関連業者に問い合わせて、引き落し口座や銀行支店を特定することができます。
 支店名や口座番号が不明な場合でも、取引している金融機関が判明している場合には、相続発生の事実を示す公的書類などを金融機関に提出し、全ての支店で口座の調査を依頼することができます。情報が全く得られない場合は、被相続人の住所地や勤務地の最寄りの金融機関にも同様に公的書類を提出し、端から照会をかけてみることなども考えられます。

2.残高の確認

通帳の残高

 通帳の記帳を確認する他に、金融機関から残高証明書を取得するなどして残高を確認します。ただし、定期預金については利息の有無に留意する必要があります。外貨預金については、相続開始時の対顧客直物電信買相場で日本円に換算されることになります。
 また、相続開始時の残高や相続開始前後の入出金には、特別受益(民903)や寄与分(民904の2)といった具体的な相続分の算定に影響する可能性があるため、同時に確認することが重要です。なお、相続人は、被相続人の預金口座の取引経過の開示を単独で請求することができます(最判H21.1.22)。

3.金融機関への届出

銀行での手続き

 金融機関への相続開始の届出が行われていない場合、その届出手続きを行います。例えば、ゆうちよ銀行の場合、親族の状況、遺言の有無、対象となる貯金などを含む「相続確認表」と「相続貯金票」に記入し、提出します。後日、払戻しに必要な公的書類や相続人の署名書類などの必要書類が郵送され、これらの原本と印鑑を用意して窓口に提出することで、払戻しを受けることができます。
 なお、金融機関ごとに手続きが異なるため、事前に各金融機関に確認が必要です。
 相続開始の届出により、通常は預貯金口座が取引停止となります。ただし、金融機関によっては、口座を凍結し、事情に応じて(例:ローンの支払いに使用される賃料収入の入金など)、相続人全員が提出する依頼書類などを受けて、特定の取引を許可したり、個人からの振込入金を受け入れたりする場合もあります。
 また、届出後の払戻しに関しても、預貯金の法定相続割合に基づく払戻しや緊急の支出(葬儀費用など)に対応する金融機関も一部存在します。しかし、対応してくれるかどうかは、金融機関ごとに異なるため、事前に確認が必要です。

4.遺産分割前の預貯金の取り扱いと払戻し

払い戻し伝票

 従来、預貯金債権に関しては(旧郵便局の定額郵便貯金を除く)相続開始時に法定相続分で当然に分割されるという理解を前提に、相続人全員の同意が得られた場合にのみ実務上遺産分割の対象とされてきました。
 ところが、平成28年の最高裁決定と平成29年の最高裁判決(一般の普通預金債権 通常貯金債権及び定期貯金債権につき最大決H28.12.19、定期預金債権及び定期積金債権につき最判H29.4.6)により、預貯金債権は相続開始時に法定相続分で当然に分割されないことが確認され、相続人の同意に関係なく遺産分割の対象となる相続財産であることが明確になりました。
 よって、遺言による承継がなされていない限り、遺産分割協議が行われるまで、相続人は預貯金債権の払戻しを受けられないことになります。
 もっとも、相続法の改正(平成30年法律第72号による改正)により創設・要件緩和された次の2つの制度により、遺産分割が成立する前にも払戻しを受けることができるようになりました。

(1)遺産分割前における預貯金債権行使の制度(民909の2)

 法定相続割合に応じた一定額(相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分)について、家庭裁判所の判断を経ずに相続人単独での払戻しが認められるというものです。ただし、各金融機関ごとに元利合計150万円の上限があります。この制度は、令和元年7月1日以前に開始された相続にも適用されます(民H30法72改正附則5Ⅰ)。

(2)家庭裁判所の仮分割の仮処分(家事200Ⅲ)

 遺産分割の審判または調停の申し立てが行われた場合、預貯金について他の共同相続人の利益を害さない範囲内で、法定相続人に仮払いが認められるように要件が緩和されました。仮払いの必要性などについては具体的な説明が必要ですが、上記(1)の限度額を超える資金が必要な場合にも利用できます。
 なお、この制度は、上記(1)と異なり、令和元年7月1日以降に開始された相続のみが対象となります(民H30法72改正附則2)。

5 預貯金の権利消滅等

時計と人形

(1)郵政民営化前の定期性貯金の権利消滅

 平成19年9月30日以前に預け入れられた定期性の郵便貯金(定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金など)は、預入期間満了日の翌日から20年間払戻し等がない場合に、権利消滅することが規定されています(郵便貯金法29、郵政民営化法等の施行に関する法律附則5)。
 そのため、これらの貯金がある場合には、通帳や証書などで最終の払戻しの時期を確認し、期間経過が疑われる場合はできるだけ早く、郵便局貯金窓口またはゆうちよ銀行の窓口に確認し、解約・払戻しをする必要があります。自動継続扱いの定期郵便貯金でも、平成19年10月1日以降に到来する最初の継続日をもって満期となり、自動継続されません。
 ただし、20年が経過していても、満期後に通帳の再交付、住所移転、登録印変更など一定の手続が行われた事実が確認された場合、払戻しが可能な場合もあります。
 なお、通常郵便貯金や通常貯蓄貯金、郵政民営化後に預け入れた貯金、ゆうちよ銀行以外の金融機関の預金についてはそのような特別の権利消滅はありません。

(2)休眠預金等(休眠預金等代替金)

 最終異動日から10年経過し、休眠預金等活用法に基づいて休眠預金等となった預貯金債権は、金融機関から預金保険機構へ移管金が納付された日に消滅します(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律7Ⅰ)。
 しかし、その後も預金者の権利は預金保険機構に対する休眠預金等代替金の形で残っており、同機構から委託を受けて支払いなどの業務を行う金融機関の窓口で(相続の場合は相続関係事実を証明した上で)通帳や身分証明書などを提示して代替金の支払い請求が可能です(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律7Ⅱ、Ⅳ)。
 委託された金融機関の商号または名称は、同法に基づき、預金保険機構のウェブサイトで公開されています。具体的な手続きや受取方法(現金受取または預金復活など)は金融機関によって異なりますので、問い合わせながら進める必要があります。また、一般の預金の払戻しよりも手続きに時間が掛かります。

(3)消滅時効

 預貯金債権も理論的には消滅時効の完成があり得ます。もっとも、ほとんどの金融機関は、時効が成立した預金についても一般的な取引慣行に従い、解約払戻しを行っています。

6 残高の少ない口座の管理

空っぽの財布

 一部の金融機関では、残高が所定の金額以下の口座について一定期間利用がない場合、未利用口座の管理手数料を請求されるため、かかる口座については管理手数料を発生させないために早期解約することも検討すべきです。

おわりに

 いかがでしたでしょうか。預貯金の相続には、様々な法律上の論点が存在し、それを相続人が平日の日中に自力で行うのには限界があります。ぜひ司法書士を有効活用して遺産整理手続きを進め、スムーズな相続の実現を目指しましょう。

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